| 編集部 |
まずは、本作を作ることになったいきさつからお聞かせください。 |
| ボッゾ |
もともと、
デヴィッド・ボウイ主演のSF映画『地球に落ちてきた男』の続編を
作ろうとして脚本を書いていたんです。
ストーリーはデヴィッド演じるエイリアンが、
自分が住んでいた惑星が水不足になったので
地球にやって来たけど、
こちらも同じような状況だったという設定でした。
いろいろリサーチしていたときに、
プロデューサーに勧められて「『水』戦争の世紀」
(モード・バーロウ、トニー・クラーク著/集英社新書刊)
という本を読み、
すでに水資源の危機が現実のものになっていることを知って
とても驚いたのです。 |
| ボッゾ |
はい。しかも深刻な問題なのに
普段のニュースで全く取り上げられず、
地球温暖化のように誰も話題にしていない現状に
改めてショックを受けました。
このままいくと、当時3歳の息子が
大人になる20年後には大変なことになっている。
この事実を広く伝えなければいけないと思い、
SF作品の脚本は中断して
まずはこちらのほうを作ることにしたんです。
そして情報を少しでも多く伝えるため、
ドキュメンタリー形式にしました。 |
| 編集部 |
人口増加や環境破壊、大企業による貧しい国からの搾取。
映画では衝撃的な事実が次々と明かされますが、
危機感を醸し出しつつも恐怖心をあおるのではなく、
いろんな角度からの問題提起と
その解決法を淡々と提示しています。 |
| ボッゾ |
わたしは今回が初めてのドキュメンタリーだったので、
リサーチのために他のドキュメンタリー映画をたくさん見ました。
ところが多くの作品が問題提起をしただけで
解決法は出していない。
そんな風に怖がらせるだけの作品にしてはいけないと思ったので、
専門家の方々に聞くなどさまざまな努力をしながら、
一つ一つの問題にその解決法を必ず付けるようにしました。
中立的な立場で情報を提供して、
それに対して今こういうアクションを起こすことができる、
と呼び掛けるスタイルにしたかったのです。 |
| 編集部 |
取材で世界中を回ったわけですが、
身の危険を感じたことはありましたか? |
| ボッゾ |
メキシコで経験したことをお話します。
メキシコでは、2000万人の国民が
そうとは知らず下水を農業用水に使っています。
政府はその事実を隠し、
キレイな水はコカ・コーラ社に売っていて、
その事実がバレそうな場所には軍隊を置いてガードしています。
わたしは下水の川を見張るガードマンの一人を買収して、
20分間そういった話を聞かせてもらえることになりました。
そこで
「わたしがあなたと20分以上話をしようとしたらどうなる?」
と聞いたら
「下水の川に君が浮かぶことになる」
と言われたんです。
それは、政府にとって都合の悪い人を消す
常套手段でもありました。
それを知った時、このまま撮影を続けるべきか迷いましたが、
すぐに撮り続けよう、と決断したんです。
あの時は本当にターニングポイントでした。 |
| 編集部 |
映画が公開されてから、どんな反応を受けていますか? |
| ボッゾ |
毎日のように、世界中の人たちからEメールをもらっています。
「自分も問題解決のために何かしたい」とか、
「学校や図書館で上映したいけど許可してくれますか?」
といったポジティブな内容ですね。
また、カナダの活動家の方が自身のコネクションを使って、
世界中で上映会を企画してくれました。
2009年の「世界水の日(ウォーター・デイ)」には
37カ国100カ所でこの映画の上映が行われたんですよ。 |
| 編集部 |
一般的な日本人は、
自分たちの国は水資源に恵まれていると思っています。
でも映画を見て、食料自給率が極端に低い日本は、
農作物などを通して海外からたくさんの水を輸入していること、
そして貧しい国から貴重な資源を搾取している事実に
改めて気付かされました。 |
| ボッゾ |
個人的にわたしはどこか特定の国が悪い、
という考え方は持っていません。
ただ、日本のみならず
外国からたくさん水や農産物を輸入している国は、
なるべく自給率を高めていく努力をしたほうがいい。
輸入に頼るということは、
他国に水を依存することになりますよね?
何らかの事情で輸出が止まってしまったら大変なことになる。
あと、日本の人々にもう一つ言っておきたいことがあります。
水問題の専門家の方は
「日本は公共の水道事業が最も成功している国の一つだ」
と言っています。
しかし最近、日本がこの水道事業を
民営化しようとしていることを知りました。
映画でも描かれていますが、
水道事業を民営化すると国民が苦しむことになる。
技術を民間に委託するのはいいと思うけど、
水自体をコントロールする権利は
公の機関でキープしておいたほうがいい。
やはり水は基本的な人権の一つ、公共のものであるといった意識は
しっかり守っていくことをぜひお勧めします。 |
 |
Sam Bozzo(サム・ボッゾ)
1969年アメリカ生まれ。
3本のショートフィルムを製作後、初めてのドキュ
メンタリー作品となる本作で、2008年に加バンク
ーバー国際映画祭環境部門のモースト・ポピュラー
フィルム賞、2009年に米ニューポート・ビーチ映
画祭の審査員賞を受賞。最新作はコンピューターの
ハッカーを題材にしたドキュメンタリーで、ナレー
ションをケヴィン・スペイシーが務めている。 |
|