2010年1月22日アップ:



編集部 まずは、本作を作ることになったいきさつからお聞かせください。

ボッゾ もともと、
デヴィッド・ボウイ主演のSF映画『地球に落ちてきた男』の続編を
作ろうとして脚本を書いていたんです。
ストーリーはデヴィッド演じるエイリアンが、
自分が住んでいた惑星が水不足になったので
地球にやって来たけど、
こちらも同じような状況だったという設定でした。
いろいろリサーチしていたときに、
プロデューサーに勧められて「『水』戦争の世紀」
(モード・バーロウ、トニー・クラーク著/集英社新書刊)
という本を読み、
すでに水資源の危機が現実のものになっていることを知って
とても驚いたのです。



編集部 この問題を知ったのは偶然だったんですね。

ボッゾ はい。しかも深刻な問題なのに
普段のニュースで全く取り上げられず、
地球温暖化のように誰も話題にしていない現状に
改めてショックを受けました。
このままいくと、当時3歳の息子が
大人になる20年後には大変なことになっている。
この事実を広く伝えなければいけないと思い、
SF作品の脚本は中断して
まずはこちらのほうを作ることにしたんです。
そして情報を少しでも多く伝えるため、
ドキュメンタリー形式にしました。

編集部 人口増加や環境破壊、大企業による貧しい国からの搾取。
映画では衝撃的な事実が次々と明かされますが、
危機感を醸し出しつつも恐怖心をあおるのではなく、
いろんな角度からの問題提起と
その解決法を淡々と提示しています。

ボッゾ わたしは今回が初めてのドキュメンタリーだったので、
リサーチのために他のドキュメンタリー映画をたくさん見ました。
ところが多くの作品が問題提起をしただけで
解決法は出していない。
そんな風に怖がらせるだけの作品にしてはいけないと思ったので、
専門家の方々に聞くなどさまざまな努力をしながら、
一つ一つの問題にその解決法を必ず付けるようにしました。
中立的な立場で情報を提供して、
それに対して今こういうアクションを起こすことができる、
と呼び掛けるスタイルにしたかったのです。



編集部 取材で世界中を回ったわけですが、
身の危険を感じたことはありましたか?

ボッゾ メキシコで経験したことをお話します。
メキシコでは、2000万人の国民が
そうとは知らず下水を農業用水に使っています。
政府はその事実を隠し、
キレイな水はコカ・コーラ社に売っていて、
その事実がバレそうな場所には軍隊を置いてガードしています。
わたしは下水の川を見張るガードマンの一人を買収して、
20分間そういった話を聞かせてもらえることになりました。
そこで
「わたしがあなたと20分以上話をしようとしたらどうなる?」
と聞いたら
「下水の川に君が浮かぶことになる」
と言われたんです。
それは、政府にとって都合の悪い人を消す
常套手段でもありました。
それを知った時、このまま撮影を続けるべきか迷いましたが、
すぐに撮り続けよう、と決断したんです。
あの時は本当にターニングポイントでした。

編集部 映画が公開されてから、どんな反応を受けていますか?

ボッゾ 毎日のように、世界中の人たちからEメールをもらっています。
「自分も問題解決のために何かしたい」とか、
「学校や図書館で上映したいけど許可してくれますか?」
といったポジティブな内容ですね。
また、カナダの活動家の方が自身のコネクションを使って、
世界中で上映会を企画してくれました。
2009年の「世界水の日(ウォーター・デイ)」には
37カ国100カ所でこの映画の上映が行われたんですよ。



編集部 一般的な日本人は、
自分たちの国は水資源に恵まれていると思っています。
でも映画を見て、食料自給率が極端に低い日本は、
農作物などを通して海外からたくさんの水を輸入していること、
そして貧しい国から貴重な資源を搾取している事実に
改めて気付かされました。

ボッゾ 個人的にわたしはどこか特定の国が悪い、
という考え方は持っていません。
ただ、日本のみならず
外国からたくさん水や農産物を輸入している国は、
なるべく自給率を高めていく努力をしたほうがいい。
輸入に頼るということは、
他国に水を依存することになりますよね?
何らかの事情で輸出が止まってしまったら大変なことになる。
あと、日本の人々にもう一つ言っておきたいことがあります。
水問題の専門家の方は
「日本は公共の水道事業が最も成功している国の一つだ」
と言っています。
しかし最近、日本がこの水道事業を
民営化しようとしていることを知りました。
映画でも描かれていますが、
水道事業を民営化すると国民が苦しむことになる。
技術を民間に委託するのはいいと思うけど、
水自体をコントロールする権利は
公の機関でキープしておいたほうがいい。
やはり水は基本的な人権の一つ、公共のものであるといった意識は
しっかり守っていくことをぜひお勧めします。



文/古川祐子 写真/橋本中(asset)


Sam Bozzo(サム・ボッゾ)
1969年アメリカ生まれ。
3本のショートフィルムを製作後、初めてのドキュ
メンタリー作品となる本作で、2008年に加バンク
ーバー国際映画祭環境部門のモースト・ポピュラー
フィルム賞、2009年に米ニューポート・ビーチ映
画祭の審査員賞を受賞。最新作はコンピューターの
ハッカーを題材にしたドキュメンタリーで、ナレー
ションをケヴィン・スペイシーが務めている。


『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』
地球上の水のたった3%しかない「淡水(真水)」。この限られた水
資源を巡って、世界各地で起きている「水戦争」の現状をとらえた社
会派ドキュメンタリー。
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監督/サム・ボッゾ
語り/マルコム・マクダウェル
出演/モード・バーロウ、トニー・クラーク、ヴァンダナ・シヴァ、
   ミハル・クラフチーク、ウェノナ・ホータ
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【公開情報】
2010年1月16日
渋谷アップリンク、ポレポレ東中野、
ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
2008年/アメリカ/90分/ビデオ/カラー/1:1.66/ステレオ/
英語、スペイン語、スロバキア語、フランス語
原題:BLUE GOLD: WORLD WATER WARS
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配給、宣伝/アップリンク
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映画『ブルー・ゴールド-狙われた水の真実』公式サイト